音読は難しい
Posted by admin on 2016年5月29日小学生の頃、国語の授業で先生にあてられて「では心をこめて大きな声で読んで下さい」と音読するよう指名された記憶があります。クラスのリーダー的存在の子でさえも、いざ音読を指名されると緊張してしどろもどろになっていたのですから、あれは小学生が経験する七代試練の内の一つだと、勝手ながら思っています。
改めて考えてみたのですが、静まり返った教室で自分一人だけ立ち上がり、見ず知らず紙上の人物に「心を込めて読む」とはかなり難儀ではないでしょうか。それを小学生にして完璧にできる人間がいたら、彼はよほどの演劇的才能をもっているか、あるいはクラスがかなりフレンドリーかくらいしか考えられません。もちろん音読の難儀性については先生だって重々承知しているから、一生懸命読んでいたらそれで合格な訳です。
では大人になってからの読書において、会話の部分を読むときの私の頭の感情移入具合と読み上げ時のテンションはどの程度のものか。無意識のそれを知りたいのですが、意識した瞬間にはもう純正無意識な感情移入は消え失せてしまうジレンマがあります。おそらく会話部もそれ以外も大して変わらぬ調子で読んでいる様な気もします、誰にも聞かれていないのだから、声色を気にせずに本の内容に集中し黙々と読んでいる、大人の読書の特権です。